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【看護】ぼちぼち訪問看護 ~回想録~ その㉙ 『1杯のコーヒーのような、看護。』
こんにちは。看護部門・副管理者の大塚です。
今年1年が皆様にとって、良き1年となりますように。本年もよろしくお願いいたします。
久しぶりの投稿となりますが、しばらくお付き合いください。
【退院時カンファレンスとは】
自宅退院をされ訪問看護を希望される方の支援として、ご入院中に病院に伺い、
退院に向けてのカンファレンスを行うことがあります。
病院の主治医・病棟看護師・理学療法士・ケースワーカー、ケアマネジャー、訪問看護ステーションスタッフ、
訪問診療の医師・看護師、その他サービス事業者、ご家族、ご本人を交えて話し合います。
また、退院後どのような生活を送りたいかの共通認識の場でもあります。
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今回の退院時カンファレンスは2時間に及んだ。
Yさんは、今以上の医療処置や延命処置、状態悪化時の救命処置は希望されておらず、「自然に逝きたい」というご希望があった。
カンファレンスで主治医から現在の状態・入院中の経過、状態は大変厳しいこと、今後起こりうる状況の説明があり、私達は退院後の介護状況の確認や、サポート体制、環境調整等について話し合った。(今回ご本人はカンファレンスに出席されていません)
最後に私は、これからのことを含め急変時など、ご家族の考えをお聞きした。
ご家族はいろいろな想いの中で揺れておられたが、それでも、Yさんの奥様と娘さんは時には瞳を少し潤ませながら、病気がわかってから今までの経過や出来事、想いや考え、今回退院にあたっての決心と覚悟をお話ししてくださった。
カンファレンスが終わり、私は1人病室で待つYさんに、
「それでは、次はご自宅でお会いしましょうね。」とご挨拶をし、病室を後にした。
病院玄関を出た頃には、日が落ちかけていた。
〜〜*
職場の同僚と2人、薄暗い駅までの帰り道。
私たちは、頭の中で先程のカンファレンスの事が色々巡っていた。軽い疲労感もあり、お互いカンファレンスの話は避け、
ぽつりぽつりと他愛のない話をしながら歩いた。
お茶でも飲んでいこうということになり、私がコーヒー好きということで珈琲専門店に立ち寄った。
お店に入ると、10種類以上の珈琲豆が並べられている。
どうしよう・・・。決められない。私は銀髪の店員さんに聞いてみた。
『酸味が少なくてビターな感じがいいんですが、どれがいいですか?』
(では、こちらの〇〇か、こちらの◎◎はいかがでしょうか。こちらは香ばしく、こちらは・・・。)と銀髪の店員さん。
『〇〇でお願いします。』
(抽出はどうなさいますか?△△と▲▲があります。)
『〇〇にはどれがいいですか?』
(▲▲は抽出方法がこのようになっていて・・。この豆には▲▲がいいと思いますよ。)
『では、それでお願いします。』
しばらくして、先ほどの銀髪の彼が私達のもとへ、コーヒーを運んできてくれた。
見た目も素敵だ。(いただきま~す)
「ふう~ おいしい。」と私。
「はあ~ ~ おいしい。」と同僚。
そう、私は、今日こんなコーヒーが飲みたかった。コーヒーって、こんなに美味しかったんだ・・・。
そして、私はとても穏やかな気持ちになれた。
たかが1杯のコーヒー。
されど恐るべし。これこそ、プロが入れたコーヒーだ。
また、是非このお店に来て、彼が入れたコーヒーを飲みたいと思った。
同僚は、「今日は色々あって、忙しかったけど、とても良い1日でしたよ。」
と今日の出来事や先程のカンファレンスでの想いを話してくれた。
店を出てから、私たちは温かい穏やかな気持ちで、先ほどより暗くなった駅までの道を歩いた。
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私達訪問看護師はご利用いただくにあたり、利用者さんから、
「望む生活は何か、どう生きたいか」という『人生のオーダー』をお聴きする。
利用者さんやそのご家族は、迷ったり不安だったり、「これでいいのか」と気持ちが揺れていることが多い。
簡単には決められないことだってある。
そして、私たちは利用者さんとご家族の要望を考慮しながら、プロとしての意見や方法を助言し提案する。
同意がいただけたら、プロとしての倫理観・判断力・知識・技術・経験を駆使し、ご自宅に伺い訪問看護を提供する。
途中、状態や状況に応じてオーダー変更は勿論ありだ。
オーダーを伺い、プロとしてのサービスを提供する。
あの珈琲専門店でのやり取りと変わらない。
利用者さんには
「こういう生活がしたかった。」「看護師さんに来てもらうって、いいね。」
「とても楽になったよ。」「また、看護師さんに来てもらいたい。」
そして、「病気はしたけれど、よい人生だった。」と思っていただけるような、
あの 『1杯のコーヒーのような、看護。』 目指したいと思う。