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ぼちぼち訪問看護~回想録~ その㉖ 3回目のさくら
こんにちは。
看護部門・副管理者の大塚です。
~私が訪問看護の世界に飛び込んで、かれこれ20年。
「昔もあって、今も変わらないもの」「今までも、これからも大切にしたいもの」
そんな日々の想いを、ぼちぼちお届けいたします~
・・・・・・・
春生まれのKちゃんにとって、3回目のさくらの季節がやってきました。
(この、「ぼちぼち訪問看護~回想録~その① 笑顔の贈り物」の文中で最後に登場し、帰り間際に笑顔のプレゼントを1つ私にくれた、Kちゃんのお話です。掲載にあたり、お母様の許可を頂いています)
Kちゃんは生まれつきの病気で心臓と気管支が弱く、上手に呼吸をすることや、口からミルクを飲むことができませんでした。
誕生後、数カ月の入院を経て、鼻から胃まで管を通し、ミルクを注入する経管栄養を行いながらの自宅退院となりました。
初めてKちゃんに出会ったのは、お誕生後2ヵ月の頃でした。
大きな瞳は私を見ているかどうか、まだわかりません。
おなかがすいても泣くことはほとんどありません。小さくてほっそりしたKちゃん。鼻にはマッチ棒ほどの太さの管が入っています。
Kちゃんはベッドの中で、ただ、ただ、じっと、静かにねんねしていました。
まず、母乳を口から飲むことを練習し、その後、ミルクを経管栄養の管から1時間かけて入れる。
それを約3時間おきに1日7~8回。終わった後はミルクを吐かないようにしばらく抱っこ。
経管栄養の器具を片付けて、お兄ちゃんたちの世話や家事。Kちゃんは、まるで走った後のようなゼイゼイした息づかいになる事が何度も起こり、そのたびに抱っこ。
あっという間に次のミルクの時間がやって来ます。
私は訪問中、Kちゃんの体調チェックや鼻の管の交換の補助をしたりしますが、半分以上は育児に対する相談や助言、不安や心配事、今思っている事などKちゃんママとお話しする時間でした。
Kちゃんママは、毎日のお世話や家事に追われて大変でした。
でもそれ以上に、Kちゃんを元気に生んであげられなかった事への悲しみや、申し訳ない気持ちが強い様子でした。
時に涙しながら、私にお話ししてくださいました。
その後もKちゃんはミルクを吐いてしまい中々体重が増えない為、ポンプで持続的にミルクの注入が開始となりました。
また、呼吸状態が悪くなり、マスクタイプの人工呼吸器が導入となりました。
Kちゃんは、体調不良で入退院を繰り返す1年を過ごしました。
2回目のさくらの季節。
色々あった1年だったけれど、自宅で1歳のお誕生日が迎えられたことを、Kちゃんママと私は2人で喜び合いました。
Kちゃんママが言いました。
「今年のさくらを、こんなうれしい気持ちで見ることができて良かった・・・。
・・・去年のさくらは涙でいっぱいで、見ることができなかったから。」
窓の外は、もうすぐさくらが満開になろうとしていました。
そして、今年。
3回目のさくらの季節。
Kちゃんは、人工呼吸器は必要なくなりました。ゼイゼイもしません。
鼻の管もありません。口から離乳食だって食べられます。むっちりとした体形になり体重も増えました。
大きな瞳はじっと私を見てくれるし、「Kちゃん」と呼ぶとちゃんと振り向いてくれます。
お座りしておもちゃで遊ぶこともできるし、まだはっきりした言葉にはなりませんが、たくさんおしゃべりもしてくれます。
ハイハイは随分ハイハイらしくなってきました。
興味あるものへまっしぐら・・・やんちゃさんの予感です。
そして春から、Kちゃんも、Kちゃんママも新しいチャレンジが始まります。
Kちゃんは保育園入園。
Kちゃんママは職場復帰。
新しいチャレンジですから、大変なこともあるかも知れません。
KちゃんはKちゃんらしく、ゆっくり、ゆっくり。ひとつ、ひとつ。
KちゃんママはKちゃんママらしく、あせらず、いつもの笑顔で。
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Kちゃんは帰り際に私に向かって手を振って、「バイバイ」のプレゼントをくれました。
私は「まあ、Kちゃん、しばらく見ないうちに大きくなったわねえ~。」
と親戚のおばちゃんのように、必ず、また、会いに行きますね。
それから、
「Kちゃん、2歳のお誕生日おめでとうございます」