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嚥下食という「異文化」?
こんにちは、言語聴覚士の池田です。
秋の風も感じる今日このごろ。早くも暖かい食べ物が美味しい季節になってきました。
さて、ご自宅で嚥下食を作っていらっしゃるご家族様も多いと思います。
当然、作ってみて初めてわかるのが、その大変さ。
先日の訪問先で、普段は粥とペースト食、水分はとろみ付きで摂っていらっしゃる方が、「家族旅行に行きたいが、ペースト食対応してくれるところがなくて困っている」とおっしゃっていました。
だからといって、家で使っているハンドブレンダーを持っていくわけにはいかないし…と。
なんだか改めて、あぁそうなんだよなぁ…と実感しました。あの宿に泊まって、お風呂に入って…なんて簡単に私たちは考えるのですが。
どこでもまだまだ難しいのです。刻み食ですら。
さらに、ペースト食だけではなく、ソフト食、ムース食、と細分化したくても、そうはいかないのです。
私たちが、ただ刻むだけなのに!つぶすだけなのに!と思っても、まだまだ世間では「異文化」扱いなのが多数ですし、ご家庭でも手間と感じる方も多いのです。
そんな中、とあるご家庭でのこと。
直接嚥下訓練中の方に対して、ご家族様が「今日はかぼちゃのペーストがあるんです!」と訓練食を提供してくださいました。
とっても綺麗なペースト、香りもすごくよくて、これはかぼちゃだけではない…?
と思って尋ねると、「最近、寒い日もあるからスープに凝っていて。野菜と調味料をペーストにしたものですが、これをのばしてスープにするんですよ。」と。
これは見事なアハ体験(cf.茂木健一郎)でした。
これなら家族で同じ味を楽しむことができるし、嚥下訓練食を準備する、という手間はないわけです。
なるほどー。
大変、辛い、時間がかかる、面倒…など、ネガティブなイメージが先行する嚥下食作り。
ほんのちょっとだけ、視点を変えるだけでぐっと楽しさが見えてくるものなんですね。
どんなことに対しても同じです。
凝り固まったこの頭と眼をしっかりほぐさねば!と思いながら、今日もバイクで走っております。