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「ぼちぼち訪問看護 ~回想録~ その⑰ これからのひと」

「ぼちぼち訪問看護 ~回想録~ その⑰ これからのひと」

こんにちは。看護部門・副管理者の大塚です。
訪問看護に携わって気が付けば20年余り・・。
「昔もあって、今も変わらないもの」「今までも、これからも大切にしたいもの」をぼちぼち綴ります。

私が結婚後、夫の転勤の為、名古屋へ転居し新しい職場で訪問看護師として勤務をしていた頃の話です。

ある日、私より随分年上の介護士のTさんがほほ笑みながら、
「あなたを見ていると、『これからのひと』だなあって思うわ!楽しみねえ。」
浮かない顔の私に向かってそう言われました。

初めての妊娠がわかり、うれしさよりは「これから訪問看護の仕事をどうしよう。仕事を続けられるのか。」という不安ばかりで、慣れない体調にも四苦八苦しながら仕事をしていた時、Tさんが私にかけてくださった言葉です。
当時の私は「これからのひと」と言われても、正直、全くピンときませんでした。

まだまだ訪問看護経験者が少数派、妊婦の訪問看護師は社内で前例がない状況でした。
自分の体調管理をしながら、どうすれば訪問看護業務が続けられるか試行錯誤です。

私は訪問内容や業務の内容を検討して働き方を所長に提案し、同僚の協力を得て業務調整しました。
自分のやる気とは裏腹に、体調が思わしくなく出勤できない日もあります。
隣接の病院の医師に報告する為、急いで医師のもとに行き報告したところ、医師から「妊婦さんはそんなに息が切れるほど動くもんじゃない!」とお叱りを受ける始末。
おなかが大きくなるにつれ、胎動を感じながら「よしよし、今日も元気ね。」と心の中でつぶやきながら訪問しました。

最後の訪問の時、利用者さんに産休に入る旨をご挨拶したところ、そっと私のおなかに手を当てて「元気に生まれてくるようにね。」と言ってくださった事を今でも覚えています。
当時、社内の訪問看護師としては初となる産休・育休取得後、子どもを保育園に通わせ、職場復帰!!めでたし、めでたし・・・。とはいきません。
実家は関西、夫は帰りが遅く出張もあります。
仕事を終え保育園のお迎えをし、一息つく間も無く、家事・育児が待っています。

時には「こんな小さいのに保育園に預けて。かわいそうに。」そんな言葉が私の胸に刺さります。
保育園から子どもの体調不良の連絡があると、残りの訪問を同僚にお願いし、申し訳ない気持ちを抱えて保育園へ急ぎます。
保育園の先生の前で泣いてしまったことも、今となっては思い出です。

私は名古屋時代に子どもを3人授かりました。
産休・育休・職場復帰を2回ずつ、3番目が生まれる数週間前まで訪問看護師として勤務することができました。
会社や上司の理解と、本当にたくさんの周囲の方々に支えられ、「子育ても、仕事もどちらもやりたい!」という私の欲張りな願いは叶えられたとのだと思っています。

Tさんが私に言われた『これからのひと』
今なら少しわかります。
「これから何かにチャレンジするひと、これから新しいことを始めるひと」とでも言いましょうか。
今の職場にも、『これからのひと』がたくさんいます。
看護師を目指す学生さん、入社し訪問看護を始めた人、訪問看護師としてのスキルアップを目指す人、家庭を持った人、親となる人、職場復帰した人・・・。
今まで、私を支え手助けしてくださった方々のように、今度は私が、私の身近の「これからのひと」を微力ながら応援し支えていきたいと思っています。