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「出てみなければ、わからないこと」

「出てみなければ、わからないこと」

こんにちは、言語聴覚士の池田です。

先日、弊社のドリカムプロジェクトに同行させていただきました。
今回は私が担当させていただいていた、脳梗塞後遺症で半身麻痺が残存している方です。
訪問時に、夫婦での外出が減ったね、前はあんなにいろんなところに出かけていたのにもう車椅子押すのも疲れちゃうし、トイレも薬も気になるし、という奥様の話に静かに頷いているその方をみて、「だったらお手伝いするから、でかけましょうよ!」と声をかけさせていただいたのが始まりでした。

プロジェクトチームに相談して決定した今回の行き先はディズニーシー。
当日は見事な秋晴れの中、お二人を現地の駐車場でお迎えすることができました。
この日は日曜日ともあって、すごい混雑…!
それでもチームスタッフの鮮やかなリードで、乗り物にも待ち時間なく乗ることができました。
はじめは車椅子を押さなくてもいいことに逆にためらいのあった奥様も、自然にスタッフに任せてくださるようになり、昔旅行した諸外国などのお話をしながら、ディズニーシーの雰囲気を楽しまれていました。

さて、いろいろと乗りましたが、揺れの激しいアトラクションにはサポートとして理学療法士や作業療法士が同行しました。麻痺側の亜脱臼もあるこの方に対して、座面や揺れ、姿勢に合わせた介助ができ、安心して楽しんでいただけていたようです。ご夫婦はテンションも最高潮に。

その後昼食時に「いやー、楽しいですねぇ」なんて暢気に隣にいたご主人に声をかけたら、
「本当に、楽しいね、ありがたいね。本当に、ありがとう。
出てみなければわからないことは、たくさんあるんだね。」
と顔をくしゃくしゃにして、涙を流しながらおっしゃいました。
そんな姿はもちろん一度もみたことがありませんでしたし、ただ驚きました。


そしてこの少ない言葉に込められた何倍もの気持ちを思って、頷くのが精一杯でした。
ディズニーシーに行くことがお二人の直接の自己実現だった訳ではありません。
それでもお二人にとってはこれが大きなきっかけになったことに間違いはなく、諦めていたいろいろなことに再びさっと色がついた、そんな瞬間でした。


実際に参加するまでは、ドリカムプロジェクトは、純粋に夢を叶えるためだけのプロジェクトだと思っていました。
でもそれは、叶えるきっかけをつくるためでも、再確認するためでも、どんなものだったかを思い出すためでもあったのです。
後遺症を抱えて諦めていることがある方やそのご家族はたくさん、本当にたくさんいらっしゃいます。それはこれまでごく普通に行っていたことだったりするんです。
当たり前だった、些細なこと。お腹の底から声を出して笑うことだって、ぐっと涙をこらえることだって、そうです。
でも専門職として、しかも言語聴覚士としてそれをお手伝いすることができるなんて思ってもいませんでしたし、鳥肌が立つほどのやりがいに満ちていました。
何がきっかけになるか、当事者すら、わからないものです。
それでも私たちはその大事な何かを引き出し、それをその方の「社会参加」へのきっかけに繋げていきたい。
日頃地域でのリハビリに従事しているスペシャリストだからこそできる取り組みです。どんな方のきっかけ作りもお手伝いができるよう、プロジェクトメンバーも成長していきます。

どなたもまずは、ご相談ください。それが、次はどんな一歩になるのか、楽しみで仕方がありません。