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訓練のツール
こんにちは、言語聴覚士の池田です。
今日は、失語症の訓練について考えていました。
在宅では、ADLはほぼ自立されていて、聴覚的理解が比較的保持されている失語症者、の例が多いと思うのですが、私が担当させていただいているこの方もそんな1人です。
聴覚的理解はまずまず、文字でも示せば概ね理解は良好。音読はゆっくり可能、自発話はもにょもにょもにょ…と雰囲気でやり過ごしている。
良くなりたいけれど、訓練そのものになんとなく苦手意識があって、良好なモダリティであるはずの音読も、訓練中はどうしてもたどたどしくなってしまう。
そんなこの方の訓練道具は今、写真のような旅行雑誌やパンフレットなどです。
それまではプリントでの読解練習などを繰り返していたのですが、なんとなく浮かない感じがあるのが気になり、思いきってがらっと訓練プログラム変更。
翌週には日本全国の路線図と、旅行雑誌を用意していきました。
雑誌の記事を音読してもらいながら、地図で場所を確認し、自宅からそこまでどうやって向かうのかを2人で話しながら考えるのです。
それまでのたどたどしさと、なんとなーく取り巻いていた“ちゃんとやらなきゃ感”がふわっと取り除かれ、笑顔が増え、驚くほど積極性も増しました。
先日は、たまたまお持ちしたお散歩マップの地域に若い頃住んでいらしたということがわかり、実際に住んでいた場所やエピソードなど、より訓練も弾みました。
一緒に考え、一緒に答えを出し、まずは2人でその時間を頑張る。
訓練時間以外でも、訓練を意識した時間をご家族の方が一緒に工夫してくださるようになり、お出かけ先のパンフレットを持ち帰ってくださったり、ご自宅でも新聞やテレビのニュースから地図で場所をみたり、と協力してくださっているようです。
訓練効果は言わずもがな、ですよね。
こうなるとプラトーもあまり関係ない気がしてきますよね。たとえSLTAの結果が大きく変わらないとしても、その言語機能でこれまで以上に工夫する術を知り、うまく生活していくことができれば。
生活期のいいところは、生活している環境でのリハビリができること、なのですから。
どんなものがきっかけになるかはわかりません。その方の生活がリハビリによってより良くなる、という根本にたち返れると、私たち自身も楽しいリハビリを提供できるんだなぁと実感しています。