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量産型
こんにちは、言語聴覚士の池田です。
地域生活期の言語聴覚士になってから、当然ですが、なにかと病院のリハビリと比べてしまいます。
以前勤めていた超ド級急性期病院では“リハビリができる状態になるようにリハビリする”みたいな側面がありました。
人工呼吸器管理下での離床、口腔内刺激、肋間筋ストレッチ…やれ理学だ作業だ言語だなどの垣根が曖昧な場面は珍しくありませんでしたし、その密な連携こそがその後のリハビリ効果を高めることは言うまでもなかったのです。
今はその時に比べれば、他職種と一緒にリハビリすることこそ減りましたが、かえって専門性の高さを問われ、しかもそれをいかに“さりげなく”リハビリに落とし込むか、ということが増えたように感じています。
週に1~2度程度しかお伺いできず、それも40~60分のきっちり限られた時間ですから、どの瞬間も無駄にはできないのです。
例えば、言語聴覚士にいただくご相談には特に「最近むせるんです」といった内容が目立ちます。
当然のことながら、リハビリプログラムには“口腔構音機能訓練”が入るでしょう。
それも、量産型のケースではいわゆる「嚥下体操」をそのまま当てはめて行うでしょうが、その中の嚥下関連筋群の筋力増強訓練こそ、専門性が問われるところだと改めて感じています。
ある方は、その「嚥下体操」そのものに疑問を持っていらっしゃいますし、またある方は「嚥下体操」にあるようなものでは足りません。
「最近むせるんです」の原因や程度などは人それぞれですから、当然ですよね。
だからこそ、量産型では戦えないのです。
喉頭挙上筋群のトレーニングとして、負荷量が違う3種、最大開口位保持と、shaker法、舌背部を硬口蓋に一定の強度で挙上させる等尺性収縮による舌挙上訓練を挙げてみます。
もちろん、それが可能な方(機能や既往歴も含めて)なら簡便で負荷量の多い等尺性収縮による訓練を選びたいところなのですが。
言語聴覚士としては、です。ここまでの線引きを強烈に求められていたのが、病院の時だったように思います。
目の前のその方が何をどこまで求めている、どんな方なのか、それは常々、どの瞬間も、考えながら向き合わなくてはなりませんよね。それが地域生活期のリハビリの大きな特徴なのかもしれません。
正直なところ病院勤務時代、弊社に入職するまでは「ずっと同じ方の担当をしていくだなんて、平坦になりはしないか、つまらなくないのか」などと考えていました。
ひとつの手技に対して、何通りもの視点を持たなければならない、またその逆でもあろうとは想像もできなかったものですから。
だからこそ、訓練法などや知識の研修会もとても大切ですが、それだけではなく、可能な限りどんどんその場に呼んでいただきたいのです。
そして言語聴覚士に評価をさせてください。
それも、早めに。
ことばも、コミュニケーションも、嚥下も、もちろん身体機能もそうですが、地域生活期の一対一のリハビリで形式的でしかない「この疾患にはこの練習」では良くなりません。
それをこのところ強烈に感じていますが、また事例は追ってご紹介しますね。
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